日々考えている事とか考えていない事とか。
各種ネタバレ取り揃えております。
人間人間3、刀語十二巻まで読了。
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さっきからばしばしばしばしウィンドウが閉じるんですが。折角書いてたのにさ……!
二回も消えたors
でも諦めずに三件目。鳳凰総受の7です。下の記事に6があるので注意。
二回も消えたors
でも諦めずに三件目。鳳凰総受の7です。下の記事に6があるので注意。
* * * * *
「…………」
左右田右衛門左衛門は、終始無言で道を歩いて居た。
といってもいつもどおり、旅の道連れはいなかったので、当たり前ではある。
行き先は皮肉なことに、真庭の里。
いや、既に皮肉に感じる必要はないのかも知れなかったが。
主たる否定姫は、この辺の事に(というかどんな事にでも)容赦が無い。
しかしまあ、これに関してはわざとやっている可能性が高かったが。
* * *
「奇策士に桃をあげたのよ」
と否定姫は唐突に言った。
「桃……にございますか」
「桃。ああでも、ただの桃じゃないのよ。その桃食べると、若返るの」
「若返る……?」
「ええ。今の時代じゃ無理だけど、何百年……何千年だったかしら? とりあえず後の時代には、そういう技術も発達するらしいわよ。ご先祖様が暇つぶしに作り方を書いててくれたから、あんたが居ない暇だった時に、作ったわけ」
「それを――奇策士に?」
「ええ。一応否定しておくけど、善意であげたわけじゃないわよ。私たちぐらいの年齢で若返っても、幼くなるだけだしさ」
年齢不詳は素知らぬ顔で、否定姫は続ける。
「それをしてどうなるかって言われても困るんだけど、まあ、嫌がらせって奴? あ、話がそれたわね。ところがね、あの不愉快な女、その桃別の人間にあげちゃったらしいのよ」
「誰に、でしょう」
にっこりと、楽しそうに。
「真庭忍軍」とその名を言った。
* * *
その桃の効力を失わせる薬……というか、酒のような物は持たされていた。
別に放っておいても良かったらしいのだが、あまり騒ぎになり、こちらに累が及んでは不味い、という判断らしい。追求をかわすことは訳も無いが、若返りの桃などどうやった、と問われるのは面倒なのが正確なところ。
奇策士をさんざ疑ってきた否定姫だったが、彼女にも、寧ろ彼女にこそ、後ろ暗いところはある。
里に入って、少しだけ考える。
この場合、真庭の頭領――それも、実質的なかしらの真庭鳳凰に、薬を渡すのが筋なのはわかっている。
わかっているが、如何せん気が乗らないし、端的に言えば嫌だ。
仕方がないので、誰でもいいから渡してさっさと帰ってしまおうと、辺りを見回して。
飛んできた苦無を、弾いた。
「きゃはきゃは。まさか弾かれちゃうとは思わなかったぜ――ってあれ? あんた、えーっと、誰だっけ」
投擲した男は平然と笑うと、右衛門左衛門の顔を凝視してきた。見覚えがあったのだろう。
暗い所為でよくは見えないが、こちらも見覚えがある――以前奇策士と共にいる所を見た、男だ。
「あ、そうだ。金髪の子猫ちゃんとこの奴じゃん。きゃはきゃは、悪かったな、行き成り苦無なげちゃったりして。で、何か用? 今割と取り込んじゃってるんだけど?」
「問題はない。恐らく、その取り込みの原因を――「蝙蝠どのーっ! そっち行ったから逃げてくれ!」
言葉が遮られる。
蝙蝠というのは男の事なのだろう、途端に顔をしかめ、何を思ったのかこちらにずんずんと近づいてきた。
そこで漸く、男の様子がはっきりと見える。
「あんた、悪いとは思うんだけど、ちょっとこれ預かれ」
「は?」
「で、少し里から出ちゃってくれよ。後で何か礼すっから」
影が妙な形をしている原因が、ここでわかった。
これ、と呼称した人間を、強引に押し付けてくる蝙蝠。
「きゃはきゃは、じゃ、俺は逃げるから!」
はっきりとそう言うと、目の前から消える。
「蝙蝠ー! 逃がしませんよ、逃がしませんよ、逃がしませんよ、逃がしませんよ!」
なんだか不穏な声が聞こえたので仕方なく、男の指示に従いその場を離れた。
* * *
これ、と言われて渡されたもの。
眠っている、人間。自分より十は若い、青年だった。
青年の顔には、見覚えがある。
見覚えがある、どころか――
「真庭、鳳凰」
あの蝙蝠とか言う男は、恐らく否定姫の部下という事から判断して、自分に預けても安全だと踏んだのだろうけれど。実際自分が自分でなければ、安全だったの、だろうけれど。
今なら殺せる、と思った。
「…………」
仮面は既に取っていた。安らかそうに眠る青年を、見つめる。首筋。心臓付近。鳩尾。頭部。
何処を刺しても、殺せそうだ。酷く、無防備な十年程前の姿。
この状態になっているという事は、彼が件の桃を食べてしまったという、事なのだろう。
「……だからお前は、考え無しだと言うんだ」
懐から薬の入れられた瓶を取り出す。
飲ませようとして、眠っている相手では飲ませられないと気がついて。
自らの唇に含み、口付けて――直接、口内に押し込んだ。
「……××……?」
開放した唇から、懐かしい名前が零れる。
意識があるわけでも無いのに、うわ言のように。
「不当――私は××では、ない」
鳳凰の口の端が、少しだけつりあがった。
寂しそうに、笑った。
だからその懐に薬を入れて、立ち上がり、その場を離れる。
こんな所に放置していたら風邪をひくのではないかなどと思ってしまった自分を、否定するように。
了.
* * * * *
終りっ! 正直喰鳳と左鳳ぐらいしか出てないんじゃねとかこれは総受って言わねーよというつっこみは受け付けますが、受け付けるだけで何も返すことが出来ません。まる。
件の桃の経路は、否定姫がとがめさんにあげて、とがめさんが怪しんで蝙蝠さんにあげて、蝙蝠さんはとがめさんから貰った物なんか食べくねーなと思ったけど、おいしそうな桃だったから人鳥君にあげて、人鳥君が鳳凰さん所に持って行って、っていう経路。長い。
ちなみにあれだ、一番初めに鳳凰さんが腰痛めてたのは、骨が急に縮んで、成長痛の逆バージョンみたいなのが出たからです。多分誰も気にしてないけど解説でした。ちゃんちゃん。
「…………」
左右田右衛門左衛門は、終始無言で道を歩いて居た。
といってもいつもどおり、旅の道連れはいなかったので、当たり前ではある。
行き先は皮肉なことに、真庭の里。
いや、既に皮肉に感じる必要はないのかも知れなかったが。
主たる否定姫は、この辺の事に(というかどんな事にでも)容赦が無い。
しかしまあ、これに関してはわざとやっている可能性が高かったが。
* * *
「奇策士に桃をあげたのよ」
と否定姫は唐突に言った。
「桃……にございますか」
「桃。ああでも、ただの桃じゃないのよ。その桃食べると、若返るの」
「若返る……?」
「ええ。今の時代じゃ無理だけど、何百年……何千年だったかしら? とりあえず後の時代には、そういう技術も発達するらしいわよ。ご先祖様が暇つぶしに作り方を書いててくれたから、あんたが居ない暇だった時に、作ったわけ」
「それを――奇策士に?」
「ええ。一応否定しておくけど、善意であげたわけじゃないわよ。私たちぐらいの年齢で若返っても、幼くなるだけだしさ」
年齢不詳は素知らぬ顔で、否定姫は続ける。
「それをしてどうなるかって言われても困るんだけど、まあ、嫌がらせって奴? あ、話がそれたわね。ところがね、あの不愉快な女、その桃別の人間にあげちゃったらしいのよ」
「誰に、でしょう」
にっこりと、楽しそうに。
「真庭忍軍」とその名を言った。
* * *
その桃の効力を失わせる薬……というか、酒のような物は持たされていた。
別に放っておいても良かったらしいのだが、あまり騒ぎになり、こちらに累が及んでは不味い、という判断らしい。追求をかわすことは訳も無いが、若返りの桃などどうやった、と問われるのは面倒なのが正確なところ。
奇策士をさんざ疑ってきた否定姫だったが、彼女にも、寧ろ彼女にこそ、後ろ暗いところはある。
里に入って、少しだけ考える。
この場合、真庭の頭領――それも、実質的なかしらの真庭鳳凰に、薬を渡すのが筋なのはわかっている。
わかっているが、如何せん気が乗らないし、端的に言えば嫌だ。
仕方がないので、誰でもいいから渡してさっさと帰ってしまおうと、辺りを見回して。
飛んできた苦無を、弾いた。
「きゃはきゃは。まさか弾かれちゃうとは思わなかったぜ――ってあれ? あんた、えーっと、誰だっけ」
投擲した男は平然と笑うと、右衛門左衛門の顔を凝視してきた。見覚えがあったのだろう。
暗い所為でよくは見えないが、こちらも見覚えがある――以前奇策士と共にいる所を見た、男だ。
「あ、そうだ。金髪の子猫ちゃんとこの奴じゃん。きゃはきゃは、悪かったな、行き成り苦無なげちゃったりして。で、何か用? 今割と取り込んじゃってるんだけど?」
「問題はない。恐らく、その取り込みの原因を――「蝙蝠どのーっ! そっち行ったから逃げてくれ!」
言葉が遮られる。
蝙蝠というのは男の事なのだろう、途端に顔をしかめ、何を思ったのかこちらにずんずんと近づいてきた。
そこで漸く、男の様子がはっきりと見える。
「あんた、悪いとは思うんだけど、ちょっとこれ預かれ」
「は?」
「で、少し里から出ちゃってくれよ。後で何か礼すっから」
影が妙な形をしている原因が、ここでわかった。
これ、と呼称した人間を、強引に押し付けてくる蝙蝠。
「きゃはきゃは、じゃ、俺は逃げるから!」
はっきりとそう言うと、目の前から消える。
「蝙蝠ー! 逃がしませんよ、逃がしませんよ、逃がしませんよ、逃がしませんよ!」
なんだか不穏な声が聞こえたので仕方なく、男の指示に従いその場を離れた。
* * *
これ、と言われて渡されたもの。
眠っている、人間。自分より十は若い、青年だった。
青年の顔には、見覚えがある。
見覚えがある、どころか――
「真庭、鳳凰」
あの蝙蝠とか言う男は、恐らく否定姫の部下という事から判断して、自分に預けても安全だと踏んだのだろうけれど。実際自分が自分でなければ、安全だったの、だろうけれど。
今なら殺せる、と思った。
「…………」
仮面は既に取っていた。安らかそうに眠る青年を、見つめる。首筋。心臓付近。鳩尾。頭部。
何処を刺しても、殺せそうだ。酷く、無防備な十年程前の姿。
この状態になっているという事は、彼が件の桃を食べてしまったという、事なのだろう。
「……だからお前は、考え無しだと言うんだ」
懐から薬の入れられた瓶を取り出す。
飲ませようとして、眠っている相手では飲ませられないと気がついて。
自らの唇に含み、口付けて――直接、口内に押し込んだ。
「……××……?」
開放した唇から、懐かしい名前が零れる。
意識があるわけでも無いのに、うわ言のように。
「不当――私は××では、ない」
鳳凰の口の端が、少しだけつりあがった。
寂しそうに、笑った。
だからその懐に薬を入れて、立ち上がり、その場を離れる。
こんな所に放置していたら風邪をひくのではないかなどと思ってしまった自分を、否定するように。
了.
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終りっ! 正直喰鳳と左鳳ぐらいしか出てないんじゃねとかこれは総受って言わねーよというつっこみは受け付けますが、受け付けるだけで何も返すことが出来ません。まる。
件の桃の経路は、否定姫がとがめさんにあげて、とがめさんが怪しんで蝙蝠さんにあげて、蝙蝠さんはとがめさんから貰った物なんか食べくねーなと思ったけど、おいしそうな桃だったから人鳥君にあげて、人鳥君が鳳凰さん所に持って行って、っていう経路。長い。
ちなみにあれだ、一番初めに鳳凰さんが腰痛めてたのは、骨が急に縮んで、成長痛の逆バージョンみたいなのが出たからです。多分誰も気にしてないけど解説でした。ちゃんちゃん。
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