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日々考えている事とか考えていない事とか。 各種ネタバレ取り揃えております。 人間人間3、刀語十二巻まで読了。
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月影クラウンさんに捧ぐ、鳳左エログロ。

 
すぅ、と背筋に指を滑らせた。
背の中心を通る瞬間、僅かに男の体が揺れる。
悟らせたくない震えなのは明白だったが、知らない振りをしてやるほど優しいつもりはない。
 
「怖いのか」
 
ぐ、と呻く声。
何とか言え、と催促してみるものの、男が返事が出来ない事ぐらいわかっていた。
口に噛ませた薄っぺらい布切れが――それだけで男の言葉を奪う。
簡単なものだな、とそれは純粋な感想だった。
人間など。
 
手元には十本の針――里の医療班からくすねて来た物。
半分ずつ――塗ってある薬がある。
薬とは言え自分がこれから男に針治療などしてやる訳もなく。
 
一つは――薬というより毒であり。
一つは――薬は薬でも、媚薬なのだが。
 
「外してやろう」
 
感謝しろよ、と言った言葉は、苦しそうに吐き出した息に殺される。
一滴も血は流していない――背中も白く綺麗である。
ただ、うつぶせの今の状況で、床に接している胸、腹は――見るも無残に鬱血しているのだが。
少し身じろぎする度に、その打撲跡に触れるのだろう、く、と噛み殺した声がした。
背中を強く押すと、痛いらしく僅かに体がはねる。
その度にまた痛みが誘発される――気の毒な連鎖だった。
 
「――まずは、一本」
 
体の前面を除けば、傷ついているのは縛られた手首足首だけである。
それでもただ、血の流れが止まって赤黒くなっているだけ――決して赤い液体を露出させはしなかった。
まるで肉の色のような黒い痕。
まるで憎しみのような赤い痣。
 
それを一通り鑑賞してから、その白い背中に。
無造作にとった針を、一本突き刺す。
 
「ぅ……がっ……!」
 
身じろぎをした男が、返って苦しそうに呻いた。
白い背中に銀の針――赤い珠が、浮かぶ。
男の背中から伸びる銀色の筋を、上から更に押し込んだ。
薄暗闇に光る銀が、傍らの赤色を引き立てる。
 
ああ美しい、と思った。
 
「さあ――どっちかな」
 
十本全てを使うつもりは無い。
戯れには、五本で十分だった。
針三本で、毒は致死量。
男にもそう伝えてある。
そして、男が死んだ暁には――男の今最も大切にするものを。
最もむごたらしく、最も残酷に、最も容赦なく――殺す、と。
 
それは脅しでもなんでもない、ただの事実だった。
 
「……ぅ……あ……っ」
 
声が湿る。
 
「媚薬だったか」
「……ぁ……あっ」
 
そう言って男の性器に手を伸ばす。
濡れ始めたそれを弄ると、ぐちょり、と音がした。
快楽に反応する度――無残に残された打撲痕が、男の体を侵略する。
 
「良かったな――死なずにすんで」
 
嬉しいだろう、と言う言葉には、見苦しいほどの喘ぎ声。
 
「媚薬が当って嬉しかったのだろう?」
「そ…………な……っ」
 
次――と針に再び手を伸ばす。
 
「おぬしはそうだ――昔からな」
 
その針が指す運命を、自分は知らない。
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