忍者ブログ
日々考えている事とか考えていない事とか。 各種ネタバレ取り揃えております。 人間人間3、刀語十二巻まで読了。
<<10/123456789101112131415161718192021222324252627282930/12>>
[538]  [537]  [536]  [535]  [534]  [533]  [532]  [531]  [530]  [529]  [528
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

初代真庭喰鮫の話。

一体になる。
水と――一体に。
 
「あ……がッ」
 
むせ返った。
しかし、げほげほと苦しそうに水を吐きながらも――少女の目に、涙はない。
後に『涙の喰鮫』と言われる、少女の目に――涙は、ない。
一旦自ら顔をあげ、美しく長い髪から水滴が流れ落ちる様は――妖艶で、美しい。
 
「わたくしは――弱い」
 
言い聞かせるように、自重するにしてはあまりに堂々と――少女は呟く。
 
「弱いものでも理想は描ける。弱いものに理想は為せない。弱いものは、無能だから」
 
そして、と少女は一人ごちた。
 
「私には理想がある。私は理想を描く。私は理想を――為す」
 
それは現実を殺す行為。
だから。
 
「現実。わたくしが弱いという現実。水が、わたくしに逆らうというこの――現実」
 
そんなものは殺してくれる。
 
少女は再び、水の中に身を沈めた。
水を吸い込む。
体内にある液体と。
同化させ。
受け入れる。
全てを。
平和のために。
平和のように。
 
嗚呼!
 
「――やっとお友達になれましたね」
 
水中で、喰鮫は笑った。
苦しみなど微塵も見せず、そして実際に苦しくないのであろう――喰鮫は笑い、そしてないた。
水の中で、気づかれないような涙を。
『涙の喰鮫』に、相応しく。
 
「ああ、嬉しいですね、嬉しいですね、嬉しいですね――悲しいです、ね」
 
そして、彼女は泣き続ける。
理想の現実となる日まで、永劫。
PR
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
プロフィール
HN:
性別:
女性
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
ブログの評価 ブログレーダー
忍者ブログ [PR]

design by AZZURR0