[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ぼくには対称と言う対象が一切合切除外されていたのである。
愛する対象も、愛してくれる対象も、憎む対象も、憎んでくれる対象も。
だからぼくは、憎むべき物を見つけた。
感情のやりどころを探したかった。本当言うと、それだけだった。
君が憎い。
君を憎まなければならない。
ぼくが人間である為に。
妹が死んで、家族が死んで、哀しくなかったわけじゃない。
だけど、哀しかったわけでも、やっぱりない。
だからただ、ぼくは憎かっただけだ。
憎まないといけないと思って。
憎まないとやっていけないと思った。
排斥したくて、排斥されたかった。
力に、矮小なぼくが太刀打ちできないぐらい強大な力に、押し流されて、押し潰されて、無くなりたかった。
なくなってしまいたかった。
それはまるで、妹のように。
ぼくがたった一人で戦争を仕掛けた日。
ぼくの事が嫌いな世界は、ぼくに幸運を与えた。
今まで不運しか与えなかったくせに、それでもぼくに幸運を与えた。
僕は排斥される事もなく。
僕は排除される事もなく。
ぼくは彼に出会い、彼はぼくを呼び、ぼくは彼だった彼女に、出会った。
記憶の中の青色は何時だって。
初恋のように、甘酸っぱい、色をしている。
初恋のように、苦々しい、色をしている。
「ぼくは、きみが嫌いだ、くなぎさくん」
本当だよ。
嘘じゃ、ないよ。
わかってるよいーちゃんと少年は言う。
でも僕は君が好きだよと少女は言う。
笑うしかない少女は、欠陥を補って尚ツギハギの少女は、笑う。
欠陥だらけは、ぼくと同じ。
だけど徹底的に、或いは決定的に、ぼくらは違う。
何故かはわからない。
井伊遥奈って知ってるか、と聞いてみた事がある。
知ってるよいーちゃんの妹ちゃんだ、と笑われた。
そうだよな知ってるよな君は物知りだもんな。そうだよ僕は物知り何だよ。僕の価値はそれぐらいだから物知りなんだよ。馬鹿だな、物知りに価値なんてあるわけないだろ。そんなのテレビの雑学王ぐらいしか役に立たないじゃないか。人間が生きる為に必要な知識なんてほんの少しだ。わかってるんだろ、玖渚君。うんわかってるよいーちゃん。でもね、僕はこうやってしか生きれないんだよ。なら死ねばよかったんだ。そうだね、死ねばよかったんだね。えへへ、でも死んだらいーちゃんに会えなかったよ。ああ、そうか。なら君が死ななくて良かった。
「嫌いだ。嫌い、嫌い、きらい、きらい、きらい」
「わかってるってば。すきすき好き好き大好き!」
「やめろよ、」
本当に嫌いなんだって、とぼくは泣いていたのかもしれない。
泣けないくせに、ないていたのかも、しれない。